私は2005年卒で、現在「BLUEDOG」というお店で美容師を勤めており、今年でもう15年目になります。
最初の3年間はアシスタントとして技術を徹底的に覚えて4年目以降はスタイリストとして働いています。技術を極めるように努力をして、10年目ごろからはモデル撮影やヘアカタログ製作、広報活動もできるようになりました。そして現在15年目です。ゆくゆくは経営者を目指しています。
これから進学してさらに学業に励む方、社会人になる方、様々いると思いますが、みなさんにメッセージを送りたいと思います。
私の故郷は新潟です。17年前ぐらいでしょうか、地元の高校を卒業後、美容師になる為に福岡高等聴覚特別支援学校に入学しました。入校したのは、不思議な縁に恵まれたことがきっかけです。実は、高校時代、新潟の美容専門学校の面接を受けており不合格通知を受け取りました。その理由は、その専門学校では授業スピードが早く、聞こえない人の立場からしたら相当大変な内容で、ついていくのは難しいのではないかというものでした。
しかし、数日後、面接を担当した先生から手紙と高等部専攻科の資料を頂きました。手紙には、「ここならじっくり勉強できるし、可能性が大きく広がる。どうするかは君次第だ。」と書かれていました。その時、強い覚悟を決めたのをまだはっきり覚えています。今は聾者でもどこの美容専門学校にも通えるほど授業の環境が良くなっているので安心しています。
私が最初、美容師を目指した理由は「聾の人が楽しく会話しながらサロンで髪を綺麗にしてほしいから自分が美容師になる」というものでした。そのため美容師になることに自分の人生を賭けてきました。美容師は技術理論や接客力はもちろんお客様との会話を円滑にするための語彙力が必要です。さらにヘアスタイルをデザインするためにファッション性やその時々のカルチャーの傾向なども常にインプットしていく必要があるし、体力も必要になります。技術理論は、数学や科学に近く、接客力や語彙力は国語に近く、デザイン力は美術に近く、時代のカルチャーは社会に近いです。体力は体育や部活動などで身につけることができます。
聾学校を卒業する前に国家試験に合格していた私は、残りの学生期間を職場体験に充てて、いくつかの店舗で働きました。そのうちの1つに採用が決まり、卒業後に正社員として働くことでスタートしました。特に頑張ったのは、自分のことを周りに理解してもらえるようにしたことです。
会社ではチームワークが大事なので、しっかりと意思疎通ができるように筆談をしたり、簡単なジェスチャーでやりとりをしたりしました。自分が本気で頑張りたいという姿勢を見せると周りの人も応えてくれます。その甲斐もあり営業中は先輩やオーナーとスムーズな連携をとれるようになり、お客様に対応できました。当然ですが、お客様は口話で話しかけてこられるので、わからない時はゆっくり話してもらうか、筆談していただくことになります。
最初は戸惑う方もいましたが、そこは無理に話をせずに正確にスピーディーな技術で、お客様に「喋れないけど、早くて丁寧にしてくれる」と思っていただく方がかえって良い印象を持たれます。もちろん口話で話したり、筆談を楽しむお客様もいるので、その呼吸に合わせてサロンワークができるようにしています。
皆さんが卒業して、聴者の世界に入るとき、コミュニケーションや人間関係が不安でうまくいかなかったりするのはどの職業でも同じです。どうやって楽しく仕事するかは本人次第であり、それぞれが自分で考えなければなりません。
「想う・動く・叶う。」これは私が中学生の頃に揚げたクラステーマでした。何かを想い、そして何らかの行動をおこす、結果として叶える。聴覚障害であるからこそ、良い行動を起こすことが、より大切で、そうすれば良き理解者が必ず現れてきます。
今後のみなさんのご活躍を心から応援しております。
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