“Nothing about us without us.”
令和5年度 第1学期終業式 校長式辞
突然ですが、皆さんはこの英語の読み方と意味(日本語)が分かりますか?
答えは、”Nothing about us without us”.(ナッシング
アバウト アス ウィズアウト アス)「私達抜きで、私たちのことを決めないで。」です。
では、このスローガンはどんな人が何のために使ったのでしょうか?
答えは、DPI(Disabled People’s
International: 障害者インターナショナル)という組織のスローガンで、国連(国際連合)で障害者権利条約を作る時の合言葉となりました。
ところで、障害者権利条約については知っていますか?
条約は国と国との間で決めるルールのことで、この条約は2006年に国連で採決されました。
それまで、日本だけでなく世界中で、人々の生活に関する色々な決まりごとは障害者抜きで決められていました。もしかすると、皆さんの家や学校でもそうだったかもしれません。その状況に反対するため、DPIという団体がこのスローガンを訴え始め、その考え方が国連でこの条約を作る時にも活用されたわけです。
その結果、この会議には各国から障害者代表が参加し、聴覚障害者も参加して意見を提出しました。日本の聴覚障害者の代表も参加したと聞いています。その後、日本でも次々に色んな障害者の権利を守るための法律が制定され、8年後の2014年に日本においてもこの条約が締結(批准)されました。
その結果何が変わったのでしょうか?答えは、テレビの手話通訳や字幕放送、電話リレーサービスなど、次々に聴覚障害者のための情報保障環境が整っていったわけです。どうですか?すごいことですね。
今から17年前に国連でこの条約が採決された頃に皆さんは生まれているので、皆さんは世の中が次々と変わっていった状況をあまり知らないかも知れません。しかし、世界中の皆さんの先輩たちが、集まって知恵を出し合い、長い時間をかけて権利を訴え続け、やっと今の状況があるのです。このように、世の中を暮らしやすく変えるためには、世の中の仕組みを知らなければいけませんし、人々に訴えるためには日本語や英語などの言葉も十分に使えなくてはいけません。また、様々なデータを整理して活用する力も必要です。今、学校で勉強している内容は、全てこれらの基本となることなのです。
勉強は教科の学習だけではありません。人と協力すること、方法を工夫して困難を乗り越えること、本や映画、旅行などで今まで知らない世界、知らない人と出会うことも大切な勉強です。夏休みは、そういう勉強ができる貴重な機会です。先生も高校時代の夏休みには、人生の中でも大変貴重な経験をいくつもして、それらはすべて今でも大切な宝物です。
皆さんも色々な経験と勉強をして、また全員が元気に始業式で会えることを楽しみにしています。
校長 早川 就